NO FUTURE FOR FUTURE

NO FUTURE,FOR FUTURE.メンタルや身体が不調でも、ほんの少しだけ明るくなれるようなことたち

元不登校の”ネガティブ・ファイター”内藤のび太、日本MMAストロー級頂上決戦へ=9.10 ※ABEMA無料中継あり

 

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直前記者会見でファイティングポーズを取るのび太

※敬称略です

 9月10日(木)19時から、ABEMA TVにて総合格闘技(MMA)イベント『Road to ONE:3rd TOKYO FIGHT NIGHT』が中継される

 セミファイナルには、MMAにおいて日本人男子ストロー級(約52kg)”頂上決戦”と言うべき対決が行われる。
 その一方が、高校時代は引きこもり気味になり中退、現在も格闘家には見えぬ内向的さを持つ、元修斗フライ級(現ストロー級)王者にして、元ONEストロー級世界王者・内藤のび太(本名:禎貴/36=パラエストラ松戸)だ。
 のび太は、同じく修斗とONEストロー級の王者経験を持つ猿田洋祐(33=和術慧舟會HEARTS)と対決する。

 以下しばらく、”頂上決戦”の理由や2人の経歴を書くが、読み飛ばしても可。


 ここで日本のMMA団体についての説明が必要となるだろう。

 日本の国内メジャー団体として『修斗』『パンクラス』『DEEP』の3つがある。体重の階級によって層の違いはあるが、だいたい同規模と言ってよい。他にもいくつか団体があるが、それら国内団体や、国外の地域メジャー選手を集めて対決させるイベントが、時折フジテレビで放送される『RIZIN』だ。
 
 そして今回のイベントは近年シンガポールを中心に新興し、アジア最大のMMA国際団体である『ONE』によるもの。修斗パンクラスの一部のトップクラスの選手は、このONEと契約することも多い。(ONEと契約すると、国内最大イベント・RIZINには出られなくなるが)ONEは、修斗等国内メジャーの上位存在と言える。

 のび太は22歳で格闘技を始めると、不器用そうに見えるが、どこまでも食らいつくグラップリング(組み技)を武器とし、14年9月に無敗のまま修斗フライ級(現ストロー級)王座を戴冠した。防衛を重ね、16年にONEへ参戦。いきなりONEのストロー級王者に挑戦すると、チョークで一本勝ちしてみせた。
 一度の防衛後、陥落してしまうが、その相手にリベンジし見事再度王者に輝いた。18年9月、現王者でもあるジョシュア・パシオ(フィリピン)に敗れ、2度目の王座を失った。

 今回の相手、猿田はのび太と似た格闘技経歴を持つ。スポーツ経験のほとんど無かったのび太と違い、器械体操から転向したフィジカル強者ではあったが、デビューからは2連敗。しかし以後は勝ちも多くなり、17年にのび太より遅く念願の修斗王座を獲得した。その後、本人曰く「のび太選手が行ったから」ONEへ参戦。初戦で元王者を圧倒し、二戦目でのび太を破ったパシオに勝利しONEでも王者となった。
 その3ヶ月後に、パシオにリベンジされ王座を失っている。

 ”頂上決戦”というのは、昨年10月に猿田は『パンクラス』の王者にKO勝利しているのだ。残るは『DEEP』の王者であるが、17年から在位し『RIZIN』にも参戦していたストロー級王者は、今年8月に敗れてしまった。実際には、このDEEP新王者・川原との三つどもえと言えるだろうが、まだ日本人以外との対戦経験を持たない川原は、未知数の部分もありあえて今回の一戦は”頂上決戦”と呼ばせてもらった。 

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猿田とフェイスオフののび太

  のび太は高校時代に不登校を経験、そのまま中退した。試合2日前に時間をとっていただいたインタビューでは「何も無くアレだった時に、格闘技のTVを見て刺激をもらった。すごく楽しい気持ちにさせてくれた」と、格闘技を観ている時だけが楽しかったと語る。

 その後、先に格闘技を習っていた弟に勧められ、総合格闘技のジムへ通うようになる。「ジムの人たちは皆強くて、後ろについていけたらと必死で練習した」と言うのび太のび太の練習の虫っぷりは、現在に至るまで有名だ。
 当時好きだった格闘技イベントは『PRIDE』で、好きな選手は桜庭和志や、藤田和之グラップリングが得意な彼らに憧れ、のび太グラップラー(打撃よりも組技主体の選手)になったのかと思ったが「目が悪いから必然的にそうなった。視力0.1無いので」と視力の問題だったらしい。

 今回は「重要な試合」であり、相手の猿田からは”戦いたかった”とラブコールを送られ続けており「光栄」でもあるという。この試合は現王者パシオへの挑戦者決定戦となるが、のび太は「タイトルマッチの前哨戦とは考えていない。これが最後の集大成の試合と思っている」と、引退も視野に入れていそうな物言いだ。
 もっとも、以前ものび太は”最後の試合”をほめのかしていたことがあり、今回も結果にかかわらず撤回していてほしい。

◆粘り強すぎる組み付きでONE王座を見事奪還した試合

 のび太の試合は、あらゆる状況からでも相手の片足をつかみ倒しに行き、立ち上がろうとする相手からどんなに殴られても組みつき続ける愚直なまでの組みスタイルだ。

 歴戦ののび太だが、現在も「うじうじ色んなことを考えてる。めちゃくちゃ色々気になっちゃうじゃないですか。気にしなきゃいいことでも、気になっちゃう。他人から見たら大した悩みじゃなくても、本人からしたら悩みだし」と、一人になっている時はネガティブなことを考えがちなのだという。

「戦っている間は、色んな悩みを忘れていられる。だからどうしようもないくらい悩んだら、めちゃくちゃ動いてみるとか。そしたら必死になってる時は忘れている。たとえばヒョウに追いかけられたら、逃げるのに必死で、なんとか生き延びなきゃいけない。悩みたくなかったら、ヒョウに追われるのも一つの手だと。…あれ、どうしてヒョウなんでしょうね」と、格闘技はのび太にとって猛獣と相対している時間なのかもしれない。

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のび太のインスタグラム @iam_nobi より

 この試合の先のことについては「人生、色々考えますけど、何も動けずにいるって感じ。試合をすることによって、僕の中でもとにかく試合が分岐点でずっとやってきた。どういう因果かこういう、試合をさせてもらえる所に流れ着いた。流されて辿りついたんで、こういう生き方もあるんだなと思って見てもらえれば」と、とにかく目の前の試合が全てで生きてきたようだ。

 「僕は中退してますし、完全にレールから外れてます。運動も別に得意だったわけでもない。何かとりえがあるわけでもない、勝てるかも不安だし。その日その日でやってきて、自分の意志とかないんで。流れ着いて、この後転げ落ちるかもしれないですけど、それも含めて楽しみじゃないですけど」と若干自虐まじりに自分の弱さも吐露する。

■相手から見たのび太は”順風満帆”

 相手の猿田は、のび太について「5年前からずっとやりたかった」と言う。猿田は「自分のほうがデビューは早いが、自分は勝ったり負けたり。のび太選手は連勝で、ONEの試合を見て『うらやましい』『自分もああなりたい』と追いかけてきた。ONEに行ったのも、のび太選手がいたから、ですね」と憧れだったことを隠さない。

 さらに「自分の格闘技人生は紆余曲折。ケガで3年くらいまともに試合できなかったこともある。仕事を続けながら格闘技を両立してきた。順風満帆でやってるやつに勝ちたい。そう、のび太選手です」とのび太を”順風満帆”だと評する。試合は「真っ向勝負して、どちらが強いか決めてやろう。うまく綺麗に勝つのでなく、戦って競り勝つ。自信もあります」と白黒きっちりつけたいとする。
 猿田もグラップラーだが、前戦でパンクラス王者にKO勝利したように、打撃の強さも光るファイターだ。

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 猿田に”順風満帆”と言われたのび太は「そう見えます?…いや挑発的な意味じゃないですよ。でも格闘技の戦績的なことでしょうね。最近は負けが込んでますし、向こうのほうが色々挑戦してるけど。僕は挑戦してこなかったので…」と自虐モードに入る。

 試合は「僕としては猿田選手がやりたいことを先にやりたい。試合なので難しいと思いますけど」と、猿田の先手を取って立ち向かいたいとする。

 あえて”ひきこもり的な人たち”のことについて、のび太に尋ねてみたが「そういう人たちは、そういう人たちで色々あると思うので。上から言うのも腹立つだろうし、反発すると思うので。僕はまあ、そこまで深く考えてない人間なんで。けど(試合を)見た時に何か感じてもらえたらいいなと思います。何がきっかけになるかはわからないので」とのことだった。

 大会は9月10日(木)19:00から22:30まで行われる。のび太の一戦は、20時半前ころからだろうか。
 ABEMA TVの生中継で、無料で見ることが出来る。

abema.tv

今回は、のび太のスタミナを生かせる5Rではなく、短い3R制の試合となる。下馬評的には6:4くらいで若干猿田の様子だが、のび太選手の持ち味を最大限に発揮し、悔いの無い試合をしてほしい。

 ※この記事は、某ニュースサイト用に取材させてもらった中で、記事に入れられなかった部分をメインに再構成しています。

www.youtube.com

(ジム仲間とのラジオ形式だったが、しばらく休止するようだ)