NO FUTURE FOR FUTURE

NO FUTURE,FOR FUTURE.メンタルや身体が不調でも、ほんの少しだけ明るくなれるようなことたち

元うつ病のキックボクサー・村田裕俊、王者との決勝戦で”勝ち逃げ引退”出来るか=10.10

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https://ameblo.jp/muratafsg/ より

 10月10日(土)東京・後楽園ホールで開催されるキックボクシングイベント『交戦シリーズvol.5』(団体:NKB)。この大会では8人制の『59kgトーナメント』の決勝戦が行われ、元NKBフェザー級王者(現在同級2位)村田裕俊(31=八王子FSG)と、現NKB同級王者・高橋亮(25=真門ジム)が対戦。新旧フェザー級王者の対決となる。

 村田は、この試合を持って引退試合となる。昨年12月から始まったトーナメントだが、村田は参戦時に「このトーナメントを持って引退」と発表しており、途中で負けてもその時点で引退であった。

 村田は高校の時にキックボクシングを始め、アマチュア無敗(5勝1分)で2012年にプロデビュー。しかしアマチュア時代が長く5年かかる。うつ病にかかってしまったからだ。
 進学校に通い医者を志していた村田だったが、浪人時に将来の不安などからうつになった。続けていたキックからも2年ほど離れ、ひきこもり気味になり、精神科病棟に入院したことも。
 カウンセリングなどでいったんは回復しキックの道に戻ってきたが、プロになっても冬などうつ症状が襲ってきていたという。
 死にたい気持ちを抱えながらリングに上がり、やけくそで戦ったら1RKO勝利したこともあったそうだ。

 現在はほぼ完全に回復しているように見える。ブログでは考え方のコントロールや、マインドフルネスなどを挙げているが、個人的にはタイ修行が効いていたのではないかと思う。
 村田は日本のキックジムに所属しているが、タイの田舎の名門ジムへ何度も渡っており、ムエタイ修行や試合前の練習などを行ってきた。現地で試合に出場することも多かった。
 タイの気質は「マイペンライ(なんとかなる)」に代表されるような大らかなもの。気候も温暖で、冬季に発症しやすい季節性うつの治療にはうってつけといえる。
 おそらく、タイの田舎のジム生や地域の人たちとの触れ合いにも、ゆるやかで温かいものがあったのではないだろうか。
 事実、村田は引退後は「タイへ行って新しいビジネスをしたい」と、第二の人生をタイで送ることも考えているようだ。

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タイでミットを打つ村田 https://ameblo.jp/muratafsg/ より

 16年には、今まで2度負けている高橋一眞(高橋3兄弟として有名で、今回戦う高橋亮の兄)に、ダウンを取る判定勝利でリベンジし、NKBフェザー級王座を戴冠した。
 村田のファイトスタイルは決してスピーディではないが、長い手足からノーモーションでパンチ、蹴りを繰り出すもの。体幹も一見定まっていないように見えるが、くねっとした動きから思わぬリズムで攻撃が来るので、相手はもらいやすい。独特の重心移動を持つ選手だ。
 17年には、当時のスター選手たちが集まるキックイベント『KNOCK OUT』でKO量産のエース・森井洋介と対戦。ポイント数では村田かと思わせるほどのドロー判定で名を挙げた。

 しかしそれからは5連敗。前述の高橋一眞にはさらにリベンジされ、その弟である聖人にも判定負けした。今回、3兄弟である残りの亮(次男)と引退試合を行うのも因縁だろうか。

 昨年4月、他団体王者の”闘ふ神主”櫻木崇浩に勝利し再起(自分の他支部後輩でした…彼もこの試合で引退)。今回のトーナメントに引退を前提に参戦した。

 相手の高橋亮は村田とは対象的に、スピーディで真っ直ぐな蹴りを武器とする。準決勝でもムエタイファイターにローキックで1RKO勝利している。現王者の高橋亮にとっては、同級の旧王者に勝ち逃げされるのは許しがたいことだろう。
 しかし、個人的には村田に最後の花道を飾ってもらいたい。

 村田はブログで過去の自分に「世の中なんでもありなんだよ。誰もお前のことそんな気にしちゃいないよ」と語りかけている。また「うつと運動」のことに触れ、その中で「ワクワクすることがなけれはなにもしなくていいのです。湧き出てくるまで待てばいいのです。なにもしなくていいのだと知ることも大事です。こんな自分ではいけないと焦る人が多いかもしれせん。人生こうでなければならないということなどないと知ることも大事だと思います」と、経験者ならではの脱力思考を披露している。

 死にたくても、勝って生き延びてしまったのだ。新しい人生に向けて、はなむけとなるような試合を期待したい。

ameblo.jp

hirotoshi-murata.com