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【アート】ひきこもりを経験した美術家が、当事者たちの部屋の写真を募集

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14年の個展時、自らのひきこもった部屋の画像と映る渡辺

 現代美術家渡辺篤が主宰するアートプロジェクト『アイムヒア プロジェクト』が「ひきこもり生活を送る方自らで撮影した部屋の写真」を募集している。「集まった写真を編集し写真集を作ります」という。

 渡辺は「当事者経験を根幹に、他者と繋がる」を主軸に美術活動を展開。東京藝大やその大学院時代には、渋谷のホームレス排除や、実家の問題でもあった新興宗教などを題材に批評性の高い作品を制作してきた。

 しかし2010年夏、失恋や当時かかわっていた社会運動からの排除などをきっかけに実家の自室に引きこもる。半年ほど部屋からほぼ出ることは無く、10年冬に「母親が弱く見えた」ことなどから徐々に外へ出る。しかしその後もすぐには”社会復帰”出来ない日々が続いた。

 引きこもりから状態から出た日、髪もヒゲも伸び放題、風呂にも入らない自らの写真を撮った。「引きこもった期間は、この写真のための役作り、場作りだった」と、自らの辛かった日々を”作品”に変えようと決意した。

 14年12月、個展『止まった部屋 動き出した家』を開催。広さ一畳ほどのコンクリートで密閉された空間に自ら一週間閉じこもり、かつての経験を”再現”した。「個展には、かつて辛かった自分を弔い、再生する意味があった」と語る渡辺は、一週間後に数時間をかけ、内部からノミでコンクリートを壊し外界へ”再生”した。

 その際に「他の引きこもりたちの”傷”にも寄り添いたい。”傷”だってカルチャーになる」と、ひきこもり当事者たちから彼ら自身の部屋の写真を募集。計60枚以上の写真が送られ、会場では15名の写真をスライド上映した。

 今回は、同コンセプトの2回目の募集となる。
 アイムヒアプロジェクトのページには「それは単なる興味本位なまなざしだけでなく、社会問題として、もしくは鑑賞者自身の経験とも重ね合わせながらひきこもり当事者の方々の生活を通して他者の痛みを知りたいという気持ちを生み、そしてそれは現代美術作品としても充分に強度のあるものになるだろう」とある。

 応募の条件は「ご本人以外からの投稿は受け付けません」とのことで、プライバシーには「誰のものか分からないよう匿名性を守ります」と配慮する。「締切は2018年12月1日(募集人数40名に達し次第締切)」

 渡辺は引きこもり中、ニコ生などのサイトで匿名同士交流していた。14年の個展時には「視聴者の中には、明らかにひきこもり、ニートがいた。僕だけ再起し、外に出てしまったけど、匿名の彼らとの関係を形にしたかった」と語っていた。


 ブログ筆者はかつて全身に自傷行為を行っていた。やめられず傷跡が消えないのでタトゥー雑誌「BURST」に売り込み、顔出し見開きカラーで掲載されたことがある。
 今では傷はあってもなくても関係ない「ただ自分」のものだが、隠したいもの、後ろめたいと思う経験を逆手に取って”表現”にすることは、自分と世界を受け入れる一つの方法になるかもしれない。

文・写真:遠藤一 ※無断でのコピー・転載を禁じます

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渡辺 篤/Atsushi Watanabe (@nabe_chan_) | Twitter

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”当事者経験を根幹に、他者と繋がる”を主軸に様々な作品を展開する渡辺