NO FUTURE FOR FUTURE

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【LGBT】「男としてリングに立ちたい」元女子ボクシング世界王者・真道ゴーが、プロテスト期限超えの36歳に

13年に女子プロボクシング世界王座を獲った真道

※7/24追記

プロボクシング協会理事会 真道ゴーの男子でプロテストOK

 

 7月18日は、ボクシング元WBC女子世界フライ級王者で、現在は男性へ戸籍変更と性別適合手術を行った真道ゴーの35歳の誕生日だ。真道は男性としてのプロボクサー復帰を希望しているが、国内初の性転換ボクサーのライセンス承認は、いまだ受理されていない。
 日本のプロボクシングには年齢制限があり、プロテスト受験資格は、申し込み時に満34歳まで。真道は本日、そのラインを超えることとなった。
 
 和歌山県に生まれ、小さい頃から性別違和に悩んでいた真道。大学時代にほぼ家出状態になり、休学しては大阪・新地のホストクラブで働いていた。
「生きている価値もない」と捨て鉢気分だったが、仲の良い同僚や常連客に「もっと自分を認めてあげてほしい」と言われ、一念復帰。鍛え直そうと近くのボクシングジムへ通いはじめた。

 当時は女子のプロが創設された時期で、そのままプロ選手に。デビュー戦以外は連勝し、連続KO記録も作った。9年前の2013年5月、WBC世界王座を獲得。
 11年には性同一障害の診断を受け、性転換手術も可能となったが、パートナーからの「男とか女とかではなく、今頑張れる場所があることが大事」という言葉を受け、防衛を重ねた。

 14年12月に王座陥落、その後も外国人選手を相手に連続KO勝利したが「(戸籍や身体を変え)家庭を持とう」と決意。16年2月に2階級制覇をかけ、WBO世界バンタム級王者・藤岡奈穂子に挑戦するも判定負け。この試合を最後にグローブを置いた。

 引退後は、タイで性転換手術を受け、戸籍や名前も変えた。パートナーと結婚し、現在は3児の父だ。また経営者として発達障害の子どもたちのデイサービスや、就労継続支援事業所などを運営している。
 しかし昨年夏、3歳の長男から「どうしてパパはボクシングをしないの?」と尋ねられた。自分の中の「男として、男と戦ってみたい」という気持ちが呼び覚まされたと言う。そしてグローブを再び手に取ったのだ。

男子B級ボクサーをスパーリングで圧倒する真道

 現役時代に世話になったグリーンツダジムで練習を重ねる日々。今年4月には西日本プロボクシング協会で男子ボクサーとの”テストスパーリング”を行い、「十分に男子プロとして戦える」とお墨付きをもらった。
 日本ボクシング協会も、プロテスト受験とライセンス交付を求める嘆願書を日本ボクシングコミッションJBC)に提出、グリーンツダジムもプロテストを要望している。

 しかし日本国内には性転換ボクサーの前例がなく、安全性確保のため、医学やジェンダーの専門家らを含んだ委員会などを開き検討する必要がある。またドーピングの問題もあり、真道が性転換のため投与しているテストステロンは、禁止薬物に該当するのだ。
 現在はホルモン数値を示す血液データを提出し、さらに専門家の面談などを行うなど、JBCも前向きに検討しているようだ。

 冒頭に書いた”年齢制限”も、今後は特例で受験できる見通しが立っているとのこと。目標としていた36歳までのデビューは遅れそうだが、現在のスポーツ科学は発展しており、30代後半以降でも活躍しているトップファイターたちは多い。

 アメリカでは18年、カリフォルニア州でアマ五冠の女性から男性へ性転換した33歳のボクサーがプロとして戦い、デビュー戦を判定勝利で飾っている。

 骨格や筋肉の違いはある。女子ボクシング現役時代は、イケイケで前へ出てKOを量産していたが、戦うスタイルも変えた。ステップを多用して距離を取っては攻防するアウトボクサーへと転換したのだ。
 真道自身「ボクシングの過酷さはわかっており、いばらの道。目標はまず一勝」と語っている。
 
 真道は世界王座戴冠時に「前向きにありのまま戦うことで、悩みを持つ人に『自分もがんばろう』と思ってもらえたら」と語っていた。現在の真道にとっての”ありのまま”が、性別変更した姿で、”ボクシングをやりたい””男として男と戦いたい”と思う純粋な気持ちなのだろう。
 ありのまま、まっすぐな道を進んでほしい。性が変わっても、年齢が経っても。
 真道さん、お誕生日おめでとう。

www.alterna.co.jp (↑10年前に私が書いた記事です)

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