NO FUTURE FOR FUTURE

NO FUTURE,FOR FUTURE.メンタルや身体が不調でも、ほんの少しだけ明るくなれるようなことたち

格闘技の英ニューヒーロー、試合前日に友人が自死「”男は語るな”という考えはやめよう」

苦しみを語ろうと訴えるピンプレット https://twitter.com/ufc

 7月23日(土・現地時間)イギリス・ロンドンにて世界最大の総合格闘技MMA)団体『UFC』の興行が開催された。
 そのライト級(約70kg)戦には、地元の人気者パディ・ピンブレット(27)が参戦。2Rで見事なチョークを決め、一本勝ちを飾った。

 ピンプレットはやんちゃな明るいキャラで、トリッキーな打撃やユニークな柔術技を得意とし、会場を湧かせている。
 イギリスの代表的なMMA団体『ケージウォーリアーズ』では、21歳の若さでフェザー級ベルトを獲得。UFCに参戦すると、3戦3勝(1KO2一本)で、3戦とも大会で最も良いパフォーマンスを見せた選手に贈られる”パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト”を手にしている。
 ビートルズを思い出させる、イギリス人らしいマッシュヘアがトレードマークだ。

一本勝ちした相手にお尻を向けるフザけた悪童ぶりのピンブレット、マイクはこの直後

 そんなニューヒーローのピンブレッドは、一本勝ちを決めた後、いつものようにはしゃいで見せたると、一転まじめな顔でマイクを握った。
 彼はこの試合の前日、友人が自死した知らせを聞いたとのこと。そして満員の大観衆に、メッセージした。

 彼が語った言葉は以下の通り。
 
 「昨日の朝4時、故郷の友人が自殺したという知らせで目が覚めた。(前日)計量5時間前のことだ。リッキー、この試合をお前に捧げるよ。

 この世界には”男は語ってはならない”という烙印がある。もし、あなたが男で、肩の荷が重く、それを解決するには自殺するしかないと思っているなら、誰かに話してほしい。

 どうか話してほしい、誰にでも話しかけてほしい。来週の奴の葬式に行くよりも、俺の肩で泣かれたほうが、どれほどマシだったことか。だからどうか”男は語るな”なんて烙印は捨て去ってしまい、男たちは語り始めようじゃないか」 

 彼は泣きながら会場を後にし、試合後インタビューでも、イギリスの40歳以下の死因のトップが自死という統計を引用し語った。

 「あなたは弱くない、誰よりも強いんだ。 人は物事を瓶詰めにしておけば良くなると思っているようだが、俺はそうではなかった...。誰かに話せば、肩の荷が下りるような気がするんだ。話すことで、弱くなることなんかない」

メッセージはストリートのグラフィティにもなった

 格闘技のホープという、ある種”マッチョの権化”のように見える存在が、これを言うことに意味があると思う。
 もしくは、いつも型から外れて”チャラい”ピンブレットだからこそ、てらいもなく言えたことなのかもしれない。

 話してほしい、というのは当然、自分は受け入れる準備がある、ということでもあろう。

 実は私も、何度か同じ知らせを聞いて、空手のコートに上がったことがあった。
 それは大会3日前のこともあり、前日のこともあった。メンタルヘルスに難を抱えている友人や知人、そして生徒が多く、自死や薬のオーバードーズ等による事故死、溺死の知らせを聞くことが珍しくなかったからだ。

 強さとは、受け入れることだと思う。
 自分の弱さも、誰かの弱さであっても。そのために格闘技もあるのだと思う。
 ピンブレッドには、その明るさと強さ、そして優しさで、これからも頑張ってほしい。

 ※ピンブレッドのマイク映像を日本語訳して載せていた方がいました