日本初”トランスジェンダー”ボクサーは誕生するのか、元世界王者・真道ゴーが男子と”準”公式戦「試合結果・内容で判断」=12.10大阪
元プロボクシングWBC女子世界フライ級王者で、17年に性別適合手術と戸籍変更を行った真道ゴー(36=グリーンツダ)が、ついに”男子”としてリングに上がる。相手は2勝2敗1分けの石橋克之(35=姫路木下)。
今回は、日本ボクシングでは異例の”準公式”試合となり、3分3Rと、通常の4R戦から1R少ないが、公式戦と同じくヘッドギアは無し、グローブは8オンスが予定されている。
真道は小さい頃から性別違和に悩んでいたが「生きる価値を持ちたい」と07年にボクシングジムへ入門。
13年にWBC女子世界フライ級王座を獲得した。
16年に2階級制覇を懸け、WBO世界バンタム級王座に挑戦するも判定負けし、この試合を最後にグローブを置いた。
引退後はタイで性転換手術を受け、戸籍や名前も変更。女性パートナーと結婚し、現在は3児の父だ。
しかし昨年夏、長男からの「どうしてパパはボクシングをしないの?」という言葉をきっかけに「男として、男と戦ってみたい」と、再びグローブを手に取った。
22年4月には西日本プロボクシング協会で男子ボクサーとの”テストスパーリング”を行い、「十分に男子プロとして戦える」とお墨付きをもらった。
日本ボクシング協会も、プロテスト受験とライセンス交付を求める嘆願書を日本ボクシングコミッション(JBC)に提出、所属ジムもプロテストを要望した。
しかし日本国内には性転換ボクサーの前例がなく、安全性確保のための、医学やジェンダーの専門家らの検証も不足していた。
そして今年7月、JBCは最終的に男子プロテスト受験は認めない結論を下した。
海外挑戦も考えていた真道だったが、代わりに”準公式”試合を提案され、承諾。国内デビューでの可能性を探ることに懸けた。
準公式試合は、プロデビュー戦前の選手が行うこともあったが、ほぼ異例。JBCのレフリー採点や勝敗がつくが、プロ戦績にはカウントされない。
JBCは「プロテストと試合は違う。より試合に近い形で安全性等を確認したい」と試合の内容・結果を踏まえ、男子プロボクサーとして査定したいとの意向を示した。
真道は「男子プロボクサーと殴り合えることは本当に楽しみ。先のことは考えず2か月後に向け頑張る」とコメントしている。
この試合の決定には「プロテストは受けられないのに準公式試合とは」「興行優先の客集め」という意見もあるが、内容次第で男子プロ資格を考慮するとJBCがコメントを出し、真道もその可能性に懸けた。
”拳”で未来を切り開くのがボクサーの本懐だろう。真道さん、勝って「ありのまま、まっすぐな道」を突き進め!
”生の世界”を撮り続ける、ろうの写真家・齋藤陽道の個展『絶対』29日まで=京橋
写真を通して世界とコミュニケーションしようとする人 ”ろうの写真家”齋藤陽道さんの個展『絶対』が開催されている。
場所は東京・銀座京橋のBAG-Brillia Art Gallery-「+1」(東京都中央区京橋3-6-18)時間は11:00〜19:00 で、入場は無料。
筆者はADHDなのでまた終了ギリギリのブログです…。
齋藤氏の写真は、個人的には全て死の間際の匂いがする。もしくは生まれたばかりの時に目にした光景や、身近な所だと、暗い洞窟から晴れた陽の世界に出てきた時の光のような。
齋藤氏は生来の難聴で、中学生まで普通学級で過ごすと、高校でろう学校に入学。手話に出会い「生まれて初めて自由に言葉を交わす感覚」を知ったと言う。
「『もっと人を知りたい』と痛烈に思いました」(齋藤さん)
人を知っていく喜びや光を表現する手法として、イラストや文章なども試してみたが、一番合っていたのが写真だったと語る。
写真の専門学校を経て、東京の出版社で働きながら様々な人、特に障害等と呼ばれるものを持つマイノリティを触れ合い、多くの写真を撮り続けてきた。
同時に20歳の時に補聴器と訣別し、より”見る人”としてい生きることを決意する。
音無き世界で「人を知る」ためにはカメラや手話、筆談ばかりでなく、格闘技に挑戦していた時期もある。
障害者格闘技団体に出場し、相手の障害に合わせ下半身を拘束、同じルールで”ノー言語”のコミュニケーションも取り、闘った相手の写真も撮ってきた。
齋藤陽道「絶対」展、絶好調の初日です!多くのお客様にご来場頂き、作品、写真集をお求め頂いており、誠に感謝申し上げます。日が沈む夕方の時間、会場に陽が差し込み、「絶対」な写真もお撮り頂けます!https://t.co/HqefUD3QpU pic.twitter.com/5CG8FRT7FC
— 赤々舎 / AKAAKA (@AKAAKAsha) October 7, 2023
人を主に撮影していた齋藤さんだが、いつからか路傍の植物や動物など、世界に置かれてある様々なものも撮るように。
しかし全ての写真には”世界をはじめて見た時”のような眩い光に溢れている。
この世界自体が、触れ合っても知り尽くせない深い生で、そのはじまりが示唆するように、いつか終わることも孕んでいる。
10年前に齋藤さんは語っていた。
「以前は、『障がい』『マイノリティ』であっても区別なく命はあるし、むしろより強い生きる本能を持っている、そんなふうに思って撮っていました。けれど、今はもっと分け隔てなく『存在』を撮りたい。世界の様々な言葉による区別を、せめて写真の中でも見えなくさせたい」
今回の『絶対』はそんな彼の表現が、年月を経て結実させた写真たちの展覧会と言えるだろう。
『絶対』初日おわりー。
— 齋藤陽道 (@saitoharumichi) October 7, 2023
いらしてくださった方々、ほんとうにありがとうございました。増刷した写真集『感動、』もばちばち売れてうれしかったー。
夜になっても、電気、ついてるよっ。 pic.twitter.com/t8hVj8E5Ht
現在は東京を離れ、パートナーと2人の子供と共に、熊本に在住して活動を続けている。
ちなみにそんな4人の暮らしの様子が描かれている写真付き書籍『よっつぼっち』(暮らしの手帳社/11月下旬刊)も刊行が決まっている。
彼の撮った作品を観ることで、自分が今”生の世界”にいることを感じるだろう。そして終わりがあることも。
全ての人におすすめですが、明日29日までですみません。
29日は齋藤さん本人も在廊、『絶対』に展示された18点の写真のプリント写真と、最新写真集で重版となった『感動、』等も発売されている。
(好きな連載)
ピンク髪のUFC王者、精神障害者ホームで”ご機嫌”ダンスが話題「あなたが嫌いだったけど…」
今年8月、レインボー髪でパリピのイカれたファイター ショーン・オマリー(28=アメリカ)は、大方の予想をくつがえし、見事な一撃KO勝利でUFC世界バンタム級王座を勝ち取った。
その新王者オマリーは10月2日、精神・知的障害がある人たちのグループホームに少人数で訪問。コミュニティのイベントで行われたダンスタイムで、皆と一緒に踊ってはハイタッチ、自然体で”ノリノリ”な動画がアップされ「こいつどこでもfeel goodなんだな」「馴染みすぎ」と話題になっている。
Sean O’Malley visited a home for people with disabilities
— Bloody Elbow (@BloodyElbow) October 2, 2023
He used to work in a home for mentally disabled people
pic.twitter.com/gdnzeHbgL0
オマリーは、世界最大の総合格闘技団体UFCきってのノックアウトアーティスト。180cmの身長ながら、61kgのバンタム級に参戦し、長い手足から繰り出す脱力した打撃で、KOの山を築いてきた。
甘いマスクや、抜群のファッションセンスや奇抜なタトゥー、また大のマリファナ好きも公言し、独特な言動でもファン・アンチ共に人気だ。
8月、オマリーは自身と真逆のグラップリング(組技)スタイルの絶対王者アルジャメイン・スターリングと対戦。
試合でオマリーはテイクダウンを切りまくっては見事、2Rに必殺の右ストレートでダウンを奪いパウンドアウト、新王者となった。
そんな人生の頂点にいるオマリーは、今月2日SNSで「地獄の週末さ、明日からまだ仕事だ」と綴り、地域の特別支援グループホームで行われたイベントに訪れたビデオを投稿。
映像では相変わらず脱力した様子のオマリーが、当事者たちに混じって、フレンドリーな様子でゆらゆら一緒にダンス、互いに自然な様子で話しかけあっている。
周りの当事者たちも、とくに彼が今をときめくUFC王者だとは気にしていない様子だ。
オマリーはUFCデビューする前に、知的障害グループホームで働いていた。この場慣れた様子は、今までにもたびたび訪れていたのかもしれない。
コメントでは「今まではあなたのことが好きじゃなかった。私は重度の障害を持って働いているが、大きな敬意を払うよ」「このビデオは、俺のスカしたショーン・オマリーという見方をすっかり変えてしまった、こいつはただのいいやつだ」「やつは人民の王者だ」と印象がガラリと変わったというコメントが並んだ。
オマリーは後日ポッドキャストで「マジで最高だった、踊りすぎて足が痛いけど。酒もドラッグも抜きで、どうしてあんなに楽しめたんだろう。ちゃんと帰宅も出来て、よく眠れたよ。これから金曜の夜はあそこで決まりだな」と、クラブでのダンスと違って安心や肯定感に包まれていたと、ご機嫌な様子だ。
オマリーの次戦・初防衛戦は、プロ唯一の黒星の相手マーロン・ベラという見方が濃厚だ。
私生活と同じく、気取らず自然体で、自由な戦いぶりを見せ続けてほしい。
自閉症・ダウン症の人との武道プロジェクトを行うファイターが、世界第2の格闘技イベントでデビュー勝利
9月23日(土・現地時間)アイルランド・ダブリンで開催された、世界第2の総合格闘技(MMA)イベント『Bellator 299』に、自閉症やダウン症当事者と格闘技を行うプロジェクトを進めるオットー・ロドリゲス(35=ブラジル/Otto Rodrigues)がデビュー、得意のチョークで2R 一本勝ちし、連勝を12に伸ばした。
ロドリゲスは試合数は多くはないものの、着実に勝ち星を重ね、今回の勝利で戦績は14勝1敗。ブラジルの著名な格闘技団体『Jungle Fight』のフェザー級王者にもなったことがある。
相手は地元アイルランドの期待の選手。試合は2R、ロドリゲスが見事な片足タックルからの豪快な投げでテイクダウンを取り、グラウンドでもコントロール、右手で首を抱え続けると、得意のチョークで一本勝ちした。
豪快な投げからのチョークに相手はたまらずタップ!
ロドリゲスは現在15歳の自閉症を持つ息子の父親だ。息子のロベルトが生まれる1年前の07年に、プロデビューした。
息子がこの特性を持っているとわかって以来、試合ではいつも自閉症のシンボルカラーである青のフラッグを掲げ「彼らと共に生きる者だ」とアピールしている。
息子のロベルトは運動と犬が好きで、とくにトレーニングジムの練習を好んだ。
ロドリゲスはインタビューで「彼がジムの練習を通した交流や、ジムで学んだルールなどが、彼の特性を改善した。他の(自閉症の)子たちよりも社交的になったように見え、訓練でもセラピーでもあったように思えた」とトレーニングが自閉症の資質から来る困難なことを改善していったように見えたと語る。
そして「彼がジム練習をしていくことによって、家族関係もとても良くなっていった。だから、他の(自閉症を持つ)家族も助けられる可能性があるのではと思ったんだ」と他の当事者もサポートしたいと思ったと言う。
そこで自閉症の子供や若者、ダウン症の人々たちへ、息子ロベルトが好み、自らもプロとして活躍する格闘技・武道を提供する社会プログラム『Estrela Azul(青い星)』を立ち上げた。
現在はリオ・デ・ジャネイロ近くの海辺町カボ・フリオで、30人ほどの当事者たちと活動していると言う。ゆくゆくはセラピーや「経済的利益をもたらす活動」も提供したいと言う。
ロドリゲスはBellator契約時には、事情で試合が流れてしまったが、フェザー級トップファイターのアーロン・ピコや、チェチェンの超人気ファイターと試合が決まっていたほどの期待株だ。
これからも勝ち上がって名を挙げると共に『青い星』プロジェクトの躍進にも期待したい。
ロドリゲスが息子や『青い星』の生徒に格闘技を教える
”自殺未遂”カムアウトした格闘技女王、メンタルヘルス支援団体を設立、妹の自死も受け…
アジア最大の格闘技団体『ONE Championship』の”絶対女王”であるアンジェラ・リー(27=アメリカ)が、自死問題に取り組むメンタルヘルス支援団体『FIGHTSTORY(ファイトストーリー)』を設立した。
アンジェラは今月19日、スポーツメディア『The Players Tribune』に手記を寄稿し、過去の自殺未遂・鬱の経験を明かし、さらに昨年死去した妹が、自死であったと告白した。
アンジェラは15年に、19歳でONEの総合格闘技部門・初代女子アトム級王座を戴冠。以降5度の防衛に成功している”絶対王者”だ。階級上の王座にも何度も挑戦している。
しかし昨年12月に、同じくONEで活躍する妹・ビクトリアが死去。以降試合を行っておらず、引退説も囁かれていた。
アンジェラは手記自身が精神疾患による”サバイバー”であることをカムアウトし、告白することに何年もかかったと語る。
アンジェラは17年11月、ハワイにて車でトレーニングに向かう途中に自動車事故を起こした。
当時21歳のアンジェラは、3度目の防衛を前にし、婚約も発表したばかり。人生の絶頂にあった。
しかしアンジェラは手記で「あの頃、防衛戦の準備をしながら、プレッシャー、ストレス、期待、すべてが蓄積し、心も体も限界まで追い込みすぎてしまった」と語る。
さらに減量で思うように体重が落ちず「試合失格になり、誰かを失望させたくない、全てを放棄しよう」と”全か無か”思考になったと言う。
そしてトレーニングに向かう途中、故意に事故を起こしたと告白した。
アンジェラはそのことを夫以外に打ち明けられなかったが、次第に「自分の経験したことを他の人と共有するたびに、少しずつ良くなっていった」と悩みや経験をシェアすることで、長い時間をかけ回復していったと言う。
そして昨年12月26日、妹・ビクトリアが「自ら命を絶った」と明かした。
アンジェラは悲しみの中からも「彼女が生きた驚くべき人生からインスピレーションを受けた。メンタルヘルスとの戦いでは、孤独を感じるかもしれないが、一人ではないことを皆に知ってもらいたい」と、非営利団体「ファイトストーリー」を設立したと言う。
ファイトストーリーとは、公式サイトによると「あなたの人生ストーリーを共有し、祝うことの出来るコミュニティ&ライブラリー」とある。
今月9日にはハワイで「愛する人を自殺で失った人や、自分自身やメンタルヘルスで苦しむかもしれない人を支援したい人」で集まりイベントを行った。
アンジェラが、またリングに復帰するかはわからない。
しかし多くの人の「人生の戦い」を支援してゆくことが、彼女にとって新しい強さになることと信じたい。