NO FUTURE FOR FUTURE

NO FUTURE,FOR FUTURE.メンタルや身体が不調でも、ほんの少しだけ明るくなれるようなことたち

”生の世界”を撮り続ける、ろうの写真家・齋藤陽道の個展『絶対』29日まで=京橋

齋藤陽道さん 『絶対』にて

 

 写真を通して世界とコミュニケーションしようとする人 ”ろうの写真家”齋藤陽道さんの個展『絶対』が開催されている。
 場所は東京・銀座京橋のBAG-Brillia Art Gallery-「+1」(東京都中央区京橋3-6-18)時間は11:00〜19:00 で、入場は無料。

 筆者はADHDなのでまた終了ギリギリのブログです…。

 齋藤氏の写真は、個人的には全て死の間際の匂いがする。もしくは生まれたばかりの時に目にした光景や、身近な所だと、暗い洞窟から晴れた陽の世界に出てきた時の光のような。


 齋藤氏は生来の難聴で、中学生まで普通学級で過ごすと、高校でろう学校に入学。手話に出会い「生まれて初めて自由に言葉を交わす感覚」を知ったと言う。
 
 「『もっと人を知りたい』と痛烈に思いました」(齋藤さん)

 人を知っていく喜びや光を表現する手法として、イラストや文章なども試してみたが、一番合っていたのが写真だったと語る。
 
 写真の専門学校を経て、東京の出版社で働きながら様々な人、特に障害等と呼ばれるものを持つマイノリティを触れ合い、多くの写真を撮り続けてきた。
 同時に20歳の時に補聴器と訣別し、より”見る人”としてい生きることを決意する。

 音無き世界で「人を知る」ためにはカメラや手話、筆談ばかりでなく、格闘技に挑戦していた時期もある。
 障害者格闘技団体に出場し、相手の障害に合わせ下半身を拘束、同じルールで”ノー言語”のコミュニケーションも取り、闘った相手の写真も撮ってきた。

 人を主に撮影していた齋藤さんだが、いつからか路傍の植物や動物など、世界に置かれてある様々なものも撮るように。
 しかし全ての写真には”世界をはじめて見た時”のような眩い光に溢れている。
 この世界自体が、触れ合っても知り尽くせない深い生で、そのはじまりが示唆するように、いつか終わることも孕んでいる。

 10年前に齋藤さんは語っていた。
 「以前は、『障がい』『マイノリティ』であっても区別なく命はあるし、むしろより強い生きる本能を持っている、そんなふうに思って撮っていました。けれど、今はもっと分け隔てなく『存在』を撮りたい。世界の様々な言葉による区別を、せめて写真の中でも見えなくさせたい」

 今回の『絶対』はそんな彼の表現が、年月を経て結実させた写真たちの展覧会と言えるだろう。

 現在は東京を離れ、パートナーと2人の子供と共に、熊本に在住して活動を続けている。
 ちなみにそんな4人の暮らしの様子が描かれている写真付き書籍『よっつぼっち』(暮らしの手帳社/11月下旬刊)も刊行が決まっている。

 彼の撮った作品を観ることで、自分が今”生の世界”にいることを感じるだろう。そして終わりがあることも。
 全ての人におすすめですが、明日29日までですみません。

 29日は齋藤さん本人も在廊、『絶対』に展示された18点の写真のプリント写真と、最新写真集で重版となった『感動、』等も発売されている。

 

co-coco.jp

(好きな連載)